Techtouch Developers Blog

テックタッチ株式会社の開発チームによるテックブログです

初のマネージャー選任は公募方式で!

テックタッチ CTO の Jun です。

5 歳の息子はサンタさんに「シンカリオン Z のこまち」をお願いしていたようですが、妻が間違えて「シンカリオン エヴァ 02」を用意したらしく、当日の反応がどうなるのか期待と不安でいっぱいです。

テックタッチアドベントカレンダーの最終日の記事になります。 テックタッチ創業が 2018 年、数名の開発チームから、30 名を超えるプロダクトチームに成長してきた中で、いままで「あえて」運用していなかったマネージャー制度に移行し、公募という形でマネージャーを選任したことを書きたいと思います。

話のきっかけ

テックタッチのプロダクトチームでは、創業から今まで、マネージャー職の運用はしてきませんでした。 これは、職場環境の風通しの良さを底上げするために「上下のないフラットな組織づくり」を目指したのと、マネージャーを生むことで各自の自立した行動が抑制されることを危惧した背景があります。特に後者は、事業立ち上げフェーズにおいてクリティカルになってくるという考えを持っていました。

目指すは「フラットな組織」ということで、ティール組織やホラクラシーを参考に、これまでオリジナリティあふれる組織運用を行ってきました。

しかし、社内から集めたエンゲージメントサーベイの結果や、退職者からの FB を元に、組織運用がうまくできていないと考えられる点がいくつか出てきた為、社内の有志でタスクフォースを組み、課題の整理と改善策の検討を行いました。

☝ テックタッチでは組織上の課題がある場合、誰でも課題提起でき、周囲の賛同者とともにタスクフォースを組んで解消に動くというカルチャーがあります。社内ではワーキングチームと呼ばれている制度です。

今回もこの制度を利用し、社内から 8 名の賛同者を得て、ワーキングチームとして課題の特定を進めました。 この WT の話は、canalun が記事にしてくれています。 すごく長いですが、是非お読みください。

このワーキングチームで出した結論の一つに、「フラットな組織からマネージャーを設置するフォーマルな体制への変更」があります。 こちらの記事では、テックタッチのプロダクトチームで初となるマネージャーをどのように選考したのかを書いていきたいと思います。

マネージャー選考フロー

公募方式

企業によってさまざまなマネージャー選考フローがあると思いますが、テックタッチでは公募方式で進めることにしました。 これは、マネージャーのような役割は、自らの意志や判断に基づいて、自らの責任のもとで行動しようとする性質(主体性)が必要になり、主体性は自分で選択し決断することで高められると考えられるためです。 もちろん、テックタッチは自ら手を上げチャレンジすることを称賛するカルチャーもありますので、その意味でも公募方式はカルチャーを体現できている選考フローかもしれません。

公募開始にあたり、マネージャーの具体的な役割、責任、権限をしっかり定義し、全メンバーに公開しました。 テックタッチは 100%中途採用になります。それぞれが前職でマネージャーという役割を見てきており、それ故にそれぞれが違った形のマネージャー像をもっています。ここを言語化することが新設されるマネージャーの期待値をメンバー全員で統一し、「フラット to フォーマル」への組織体制の移行をスムーズにしてくれると考えました。

また、今回マネージャーとなった場合でも昇格ではなく、スペシャリストからマネージャーへの役割の移行という事にしました。 スペシャリスト気質の多いエンジニア集団の中でマネージャーになりたいと思ってくれるほうがどの程度応募してくれるのかはすごく不安でしたが、6 名もの方がマネージャーに立候補してくれました。 一緒に組織運営を行ってくれるという意思ですので、とても嬉しい限りです。

また、今回は自薦だけでなく、メンバーからの他薦も受け付けるようにしました。 過去にマネージャー経験がないほうは、自分がその役割を担えるのか不安視されているほうも多く、他薦を設けることで周囲の方から後押しをもらい、自身の新しいチャレンジのきっかけにになればと思っています。実際に 2 名の方が、他薦からのノミネートという形になりました。 もちろん他薦を受けたほうにも最終の意思(自分で選択し決断したという事)を確認しています。

自薦 6 名 & 他薦 2 名 の計 8 名の選考がスタートです。

選考基準と選考

次は選考基準についてです。 今回の選考基準を作るうえで、マネージャーの役割を担う時点で必要なマスト要件と、マネージャーになってから身に着けていけばよいウォント要件を分けて考え、前者のみを選考観点とすることにしました。

マネージャーの役割を担う時点で必ず必要なマスト要件としては以下のものを設定しました。

  • 人から信頼され、正しくポジティブなコミュニケーションができるか
    • 言うことと行動に矛盾がない
    • 偏らず、適切・健全な考え方
    • 実務能力・業務に必要な幅広い知識
    • 言語化スキル・想像力
  • 明確なビジョンを持ち、効率よく実行できるか
    • 戦略的思考力・分析力
    • 課題設定力・実行力

選考方法

次に選考方法です。選考は一次と二次に分けて実施しました。

一次は「人から信頼され、正しくポジティブなコミュニケーションができるか」という観点を軸に置いた選考基準となっております。 こちらを適切に評価するため、候補者の方と日ごろ業務を行っているメンバーから、360 度 FB という形でいくつかのアンケートに答えてもらいました。 いただいたメンバーからのアンケート結果を読み込んだ後、僕(CTO)と井無田(CEO)でインタビュー形式で実施しました。

二次は「明確なビジョンを持ち、効率よく実行できるか」という観点で実施しました。 一次とは違い、より能力面にフォーカスがあたっています。 ここは一緒に働いた経験が無くても見極めやすいという側面もあり、第三者的な立場の方の意見をもらうことで納得感も出せると考え、経験豊富で信頼のおける外部の人事アドバイザーの方と僕(CTO)で実施しました。 候補者の方からすると、初めましての場で選考がスタートするという、入社前の面接に近い体験をしてもらったと思います。

選考官は合否を決めることも一つのゴールなのですが、もし今回は見送りとなったときにどういった点を延ばしてほしいか、また、マネージャーではなく別の役割を担うほうがその方の強みを生かせると考えたのであれば、今後のキャリアプランを一緒に考え、提案できるようにしたいと思っています。 そのため、インタビューの内容を録画をさせてもらい、翌日以降に何度も聞きなおし、言葉一つ一つの理解に努めました。

結果

当初から選考基準をしっかり定めていたため、合否判断はスムーズに進むと思っておりましたが、そんなことはもちろんなく、すごく迷う部分もありました。 マネージャーは、マネージメントされる方への影響も大きいため、マネージャーの役割を担う時点で必要なマスト要件を評価すると決めており、募集枠を埋めるような相対的な評価ではなく、選考基準を厳格に運用した絶対評価で行なうことを強く意識しました。 「候補者 + 選考官 VS 選考基準」という構図になります。

結果として、8 名の候補者の方から、3名の方にマネージャーをお願いすることとなりました。

リーダーシップ研修へ

テックタッチに限らず、マネジメントに必要なことを体系的に学んだことがなく、自己流で奮闘されているマネージャーの方が多くいらっしゃると思います。(僕調べ) 特にスタートアップをキャリアの中心の進められているほうだと、社内教育環境は整っていないことが多く、そのような機会を得るのは難しいと思います。 そんな状態で進めていると、マネージメントをする側も、される側もつらい状況になる可能性が高くなります。今回のマネージャー選考フローは、このリーダーシップ研修の受講もセットで設計しました。 幸いテックタッチでは、信頼できる人事領域のスペシャリストの方にアドバイザーとなってもらうことができ(上記の二次面接の方)、質の高い研修をお願いできることになりました。 ですので、今回マネージャーとなったほうは必須で、見送りとなったほうも任意でリーダーシップ研修を受けていただきました。(結果、全員参加でした。)

振り返ってみて

こうして、ワーキングチーム発足から数か月をかけ、マネージャーのいない組織からマネージャーのいる組織に変わることができました。 マネージャー発足から 3 ヶ月程度しかたっていないため、結果の振り返りにはまだ早いかもしれませんが、エンゲージメントサーベイの結果は改善傾向にあります。 課題が 0 になることは無いのですが、チーム内の課題に向き合う中心人物が明確になり、それぞれのチームで課題をテーブルに上げ議論し、改善策を実行する土壌はできたのかなと思っています。 マネージャーになられたほうも、新しいキャリアを楽しんでもいるようで、心強く思っています。

また、自分自身の変化もありました。 選考プロセスを通して、マネージャーとして適任かどうかはもちろんなのですが、その人の強み弱み、どういったキャリアがもっとも向いているのだろうかを僕なりに本気で考えました。 不思議なことに、考えれば考えるほど、その人の人間的な魅力も再認識できました。 そんな中で、自分も本心で、ポジティブな FB に限らずネガティブな FB をしっかり伝えたいと思えるようになり、またこういった姿勢が伝わったのか、すべての方がしっかり僕らの FB に耳を傾けてくれたと思っています。 そして、マネージャー選考に入ってもらった全員の方に、事後に FB をもらいましたが、総じて良い体験だったという言葉をいただいており、それが何よりうれしかったです。

今年も無事乗り切ることができ、来年もっと飛躍するモチベーションを持って年末を迎えられることを嬉しく思っています。 メリークリスマス!