こんにちは、PdM(プロダクトマネージャー)の shu です。
最近は暖かくなり、散歩が気持ちよくなってきた季節ですね🌸
自分のおすすめの散歩コースは、日比谷駅付近から丸の内方面へ歩いていくコースです。
b8ta Tokyoでおもしろい製品を見て・試してみたり、KITTE の屋上から普段とは違う角度で東京駅をみてみたり、皇居の近くで桜を見てみたりと、「都会と自然」両方を楽しめるコースになっているのでおすすめです。
さて今回は、プロダクトマネジメントチーム(以下PMチームと略します)が取り組んでいる「Product Ops」についてご紹介します。Product Ops は、PMチームが抱える組織課題に対する実践的なアプローチです。その目的は、PMチームの生産性と開発品質を確実に高めていくことにあります。
本記事では、Product Ops の具体的なアプローチや進め方を、できる限り分かりやすくお伝えしたいと思います。ご参考いただけましたら幸いです。
課題と背景
テックタッチのPMチームは現在、PMM 2名とPdM 4名の計6名で構成されています。そして、去年、CPO にdecchoさん(中出)が就任したことをきっかけに、PMチームの組織体制が整備されていきました。decchoさんの記事にある通り、プロダクト開発をより科学するためにプロセスの標準化が着実に進められています。(以下、プロセス図です。)
ただ、プロセス化したことで戦略的にディスカバリーできるようになったのはいいものの、実際に運用し始めると以下のような課題が生まれてきました。
ディスカバリーの過程で検証や調査を分担し、並行して進行するようになった結果、全体最適が図れない状況が発生
- 例)テックタッチではデータチームと協力してイシューの調査・分析を行っていますが、データチームへの協業依頼が個々の判断や優先度に基づいて行われていたため、本来最優先で取り組むべき課題が後回しになったり、誰かが対応してくれると思い込んでしまい、結果的に課題が放置される事態が発生しました。
最終的なアウトプット(例:PRD やインタビュー設計)の品質とフォーマットが個々の能力や進行方法に依存してしまい、再現性のある質の高いアウトプットを一貫して生み出せない
責任者が明確に設定されていなかったため、情報が整理されず、どの問題を誰に問い合わせれば解決できるのかが不明瞭で、認知コストとコミュニケーションコストが増大
- 例)テックタッチではロードマップを考える際にリファクタリングのリソースを一定抑えているのですが、リファクタリングの中でも「何を・いつまでに・なぜやるべきなのか」が整理されておらず、誰とコミュニケーションを取れば良いのかが不明確な状態でした。
そのため、通常業務の2割程度を上記の課題解決のために時間を使うことをPMチームとして意思決定し、その活動を Product Ops と社内で呼称しています。
Product Opsについて
テックタッチにおける Product Ops の定義は、
プロダクトマネジメントチームで行われる様々なオペレーションを最適化し、質の高い成果物を効率的かつ継続的に生み出せるよう支援する取り組み
です。具体的には、以下のようなことを行います。
- ユーザーの生の声や定量的な分析結果を確実に収集し、意思決定プロセスに適切に反映できるよう体制を構築する
- 市場分析・競合分析から得られた戦略的方針を具体的な開発計画に落とし込める体制を構築する
- PRD や開発チケットなどのドキュメントを標準化し、適切な内容がきちんと記載されるようルール化する
- リリーススケジュールの管理や新機能の活用方法をビジネスチームへ連携するなど、プロダクトリリースに向けた一連の業務フローを最適化する
ただ、「そもそも一般的な Product Ops とは何か?」と思った方も多くいるかと思います。(私も最初思いましたw)
色々調べてみるとそこまで浸透・普及しているものではないようで、明確な定義はなく、各社によって呼称や役割がまちまちでプロダクトマネジメントと同様に正解があるものではないようです。海外では Product Operation と呼ばれていたり、国内ではCPO室やプロダクト戦略室などと呼ばれていたりして、職種として明確に定義しているところもあれば、プロダクトマネージャーの業務の1つとして上げられていたりもします。
参考文献を載せておきます
実際に行ってきた Product Ops
これまで取り組んできた Product Ops の活動は、様々な工夫を凝らし、大きな学びを得られるものばかりでした。内容の濃さからも、今後どこかで、それぞれを別途ブログで詳細に切り出したいと考えています。
- ロードマップ構築の体制整備:四半期に1度行われるロードマップ構築に向けて、各プロセスにチェックポイントを設け、責任者を置くなどしてイテレーティブな体制を整備しました
- 近接チームへの情報連携の場の設計:各PMチームのディスカバリーの進捗状況を、データエンジニアチームやデザイナーチームへスムーズに伝えられるよう、情報共有の場を設計しています
- 定量データ分析の型化:分析タスクの棚卸しやデータチームへの連携、様々な分析プロジェクトの推進、分析結果の横展開など、定量データ分析に関するプロセスを型化しました
- PO業務の型化:PRD のフォーマット作成やレビューフローの構築、エンジニアチームとのコラボレーション方法の標準化を図りました
- 顧客要望の集約オペレーションの型化:各所から寄せられる顧客要望を一元的に格納できるDBを構築したり、AIを活用した要望の要約など、効率的な集約オペレーションを整備しました
- リファクタリングの定義と集約オペレーションの型化:リファクタリングの粒度を明確に定義し、その規模に応じた実行計画の立案や相談体制を構築するなど、リファクタリングに関するオペレーションを型化しました
etc….
進め方
まず、Product Ops の活動は四半期を1サイクルとしています。
- 四半期に一度、PMチーム全員で集まり、現行の開発プロセス(冒頭に添付している画像)を振り返ります。そこで課題となっている箇所を洗い出し、Product Ops 化して改善を図る対象をざっくりと選定します。
- 次に、PMチームでそれぞれの課題に対する担当者を決めていきます。まずPMの中から、担当を希望する課題について自主的に手を挙げてもらいます。その後、マネージャーが適正を見極めながら、最終的な課題とPMの割り当てを行います。基本的には1人のPMが1つの課題を担当することになります。
次に、各PMは自身の担当課題について、具体的な解決策を設計し、実行計画を立案します
計画を立てる際に以下のようなフォーマットを利用しています
設計と計画が固まれば、PMチーム内で合意を得た上で、実際に改善活動に着手していきます
改善活動の進捗管理のため、隔週で Product Ops 専用の進捗確認ミーティングを開催しています。ここでは担当PMからの状況共有や相談を受け付けるほか、横の連携を図っています。
進捗確認の際に以下のようなフォーマットを利用しています
そして四半期の終わりが近づけば、次のサイクルに向けて担当者のローテーションを行います。前四半期からの継続課題がある場合は引き続き取り組むことになりますが、新規の課題についても担当PMを決めていきます。
このように、常にプロセスの課題を洗い出し、改善を重ねていくサイクルを回しています。
Product Ops化して良かったこと
Product Ops を始めたことで以下2点が改善されています。
- 意思決定の精度が高まった
- 課題に関する全ての情報が一か所に集客されたことでいつでも参照でき、意思決定の材料が格段に充実。結果、意思決定の不確実性を大きく下げることができています。
- また、明確な責任者を課題ごとに置いたことで、重要な課題が見落とされるリスクが低減し、確実な意思決定を行えるようになりました。
- ステークホルダーへのタイムリーな情報共有が実現できた
- 他チームへの定期的な情報連携を確立したことで、実際にアクションが必要となった際に、関係者間で既に十分な状況理解ができていました。
- 事前の情報共有がしっかりされていたおかげで、後々の業務がスムーズに進み、スピーディな対応を可能にしています。
- 適切な情報が、適切なタイミングでステークホルダーに届くようになり、全社的な意思疎通が円滑になりました。
また、Product Ops をきちんとプロジェクト化し、責任や役割を明確化したことで、次のようなよかった点もありました
- 定期的に進捗を共有する必要があるため、自然と継続的なコミットメントが確保できている
- 四半期ごとに担当Opsをローテーションしているため、特定の人にスキルが偏ることなく、プロダクトマネジメントのノウハウがチーム全体で共有・分散されている
- 責任者だけでなく、巻き込む人も明確化されるため、周りのヒトからコミットしてもらえたり、依頼しやすくなっている
- 各メンバーの役割を明確にするために、DACIというフレームワークを活用しています。DACIについては、以下の記事にてわかりやすくまとめられています。 意思決定フレームワーク DACIモデルとは? RACI、RAPIDとの違いや、活用の4ステップを解説!
さいごに
今回は Product Ops について紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。私たちのPMチームでは、前回の四半期振り返り時に全員が一致して「やってよかった!」と感じていたため、これは有効なアプローチだったと考えています。
しかし、他にもさまざまなアプローチが存在すると思いますので、「こんな方法がある」「こんなことをやっている」など、ぜひ意見交換させていただけると嬉しいです。(TwitterでDMもらえると嬉しいです!)