Techtouch Developers Blog

テックタッチ株式会社の開発チームによるテックブログです

AI (Dify) で変わるマーケティングとデザインの協業プロセス

こんにちは、テックタッチのコミュニケーションデザイナー okiku です。最近収納ケース4箱分の断捨離をしました。身も心も晴れやかです✨

本記事では、AI を活用してマーケティングチーム(以下マーケチーム)とデザインの協業プロセスをどのように革新したかをお伝えします。AI がすべてを解決するわけではありません。しかし、日々の業務を効率化する強力な後方支援として、その具体的な活用プロセスを深掘りします。

ぜひ最後までお読みいただき、協業プロジェクトのヒントにしていただけたらと思います。

取り組みのきっかけ

展示会準備の最適化

テックタッチのコミュニケーションデザイナーとして、私が日々直面する課題の一つに、「マーケチームとの連携における展示会準備の最適化」があります。

展示会準備について簡単に説明します。展示会では、訴求内容をキャッチコピーに仕立てます。それをパネルやロールアップバナー、チラシなどの制作物に落とし込み、ブース全体を作り込みます。展示会ごとにターゲットや切り口が違うので、それぞれに最適なプランを立てていくことが必要です。

展示会ブースのイメージ

これまで、コピーライティングやブース設計などはマーケチームが担っていました。マーケチームのメンバーは、プロダクトの特性や顧客のインサイトを深く理解するエキスパートです。しかし、デザインやキャッチコピーといったクリエイティブ制作の領域においては、「もっと専門的な視点を取り入れたい」という希望や、日々の業務で深く思考する時間の確保が難しいという声も耳にしていました。

そこで、私はコミュニケーションデザイナーとして、自身の広告業界での経験を活かし、マーケチームのプランニングの初期段階から参加することで、それぞれの得意分野を最大限に発揮できるような協業の形を目指そうと考えました。

新しいプロセス

5月に出展した展示会をテストケースとして、上流から参加させてもらうことになりました。

  1. ターゲットの属性、インサイト(ターゲットが心の底に秘めている本音や、行動の背景にある深層心理)を整理し、理解する
  2. インサイトに響く訴求の方向性を複数出す
  3. 方向性ごとにキャッチコピー案を複数出す
  4. 上記内容を関係者に共有し、方向性・キャッチコピーをすり合わせる
  5. 決まったキャッチコピーでブースデザインを作り込む(従来はここから関わっていた)
    展示会プランニングの流れ

手応えと課題

実際に展示会案件に上流から関わってみると、マーケチームのメンバーが持つプロダクトや顧客への深い知見と、私のクリエイティブ面が融合しました。その結果、「これまでよりもターゲットに深く刺さる訴求ができている」という手応えを感じました。

しかし同時に、私が毎回フルでプランニングに参加することは、コミュニケーションデザイナーとしての他の業務との兼ね合いで工数的に難しいことも実感しました。

どうすれば、より安定的に、かつ効率的に最高の成果を出せるのか。この問いが、次のステップへとつながりました。

AI 活用の模索

デザイナーチームの助言

展示会の協業における課題に直面する中で、デザイナーチームのメンバーから「展示会プランニングに AI を使ってみるのはどうだろう?」というアイデアが持ち上がりました。ちょうどこのころ、社内での AI 活用が盛んになっていたため、「活用のチャンス!」という話になったのです。そこでさっそく、具体的なアクションに移すことにしました。

ツールの検討

社内では多くの AI ツールの導入が進んでいましたが、今回私は以下の観点でツールを検討しました。

  • エンドユーザーが予備知識なく、すぐに使える(かんたん)
  • 誰でも同じように使える(再現性が高い)
  • 展示会ごとに違うインプット(ターゲット情報、自社が訴求したい内容)に対応できる(柔軟性が高い)

これらの要件を満たすツールとして、
Dify (Dify: 最先端のAgentic AI開発プラットフォーム)を選択しました。

Dify で実現する「展示会プランナー AI 」

Dify の大きな強みは、プロンプトの設計から複雑なワークフローの構築までを直感的に行える点です。これにより、私たちのような非エンジニアでも、「展示会プランナー AI 」のような、ユーザーフレンドリーな AI アプリケーションを柔軟に開発できるのです。

作成してはテストをする、ということを繰り返す中で、「ユーザーが仮説を立て、それに対して AI がレビューをする」という形にすると、アウトプットの表現の豊かさにつながる、という気づきがありました。 そこで、以下のようなワークフローを組んでみました。

  • ユーザーからの入力:
    • 展示会公式 HP URL
    • テックタッチサイト URL
    • 仮説(どんな人に何を訴求したらいいか、ユーザーの考え)
  • AI による処理(Dify ワークフローの内部プロセス):
    • ターゲット情報の整理(AI が入力情報からインサイトの骨子を構造化)
    • 仮説に対してのフィードバック(AI が仮説の論理性を多角的にレビューし、不足点を指摘)
    • キャッチコピー案の提案(AI がターゲットと訴求軸に沿った多様なコピー案を生成)
    • 展示会における訴求を強化するためのアドバイス(AI がブース設計やプロモーション戦略のヒントを提供)
      Dify のワークフロー

「展示会プランナー AI」の利用イメージ

ユーザーが入力するのは3つです。

  • 展示会公式 HP URL
  • テックタッチサイト URL
  • 仮説(どんな人に何を訴求したらいいか、自分なりの考えを述べる)

先に述べたように、ユーザーの記述する仮説が、AI のアウトプットの質を左右するため、ユーザーがしっかりと考え、入力することが重要です。

画像のアウトプットはあくまでサンプルですが、ユーザーの仮説に対してフィードバックをし、展示会のメインコピーとサブコピーの案が5つ提案される作りになっています。

Dify で作成した展示会プランナー AI の利用イメージ

実際に使ったマーケチームの声

  • 考えていることを要約してくれるので思考の整理になる
  • 仮説に対して FB をくれるので、訴求すべきポイント・観点が不足していないか気付ける
  • 5案出してくれるので、イメージに近いコピーやキーワードを見つけやすい
  • 訴求効果を高める提案をしてくれるのが嬉しい
    • 施策が続くとそこまで頭が回らない時もあるので、提案をもとに考えやすい
  • 展示会プランナーアプリに情報を入れるために、調査が必要なので、自身の理解を深められる

「AI がすべてをやってくれるわけではない」という部分がネガティブに感じられないかという心配がありましたが、むしろ良い面として捉えられました。このことは、AI が私たちの思考プロセスをスムーズに繋ぐ「後方支援」として機能する価値を明確に示してくれました。

後方支援としての AI

最後に

展示会プランニングに AI を活用する取り組みは、良い結果をもたらしましたが、まだ課題もあります。 それは、「AI のアウトプットはそのままでは使えず、ある程度加工する必要がある」ということです。AI は一般的なロジックには強いですが、「テックタッチらしさ」を表現する言い回しなど、より抽象的で深い部分の表現は、やはり人間が磨き上げる必要があります。出てきた5案をもとに、削ったり組み合わせたりして、実際の展示会には使用しました。そういう意味でも、「後方支援」としての活用は、現段階で最適だと考えています。

この AI 活用プロジェクトは、コミュニケーションデザイナーとしての私の役割や、マーケチームとの協業のあり方を再定義する挑戦です。AI が、デザインにおける強力なパートナーとなるためのより良い関係性を模索し続けていきたいと考えています。

協業のより良い関係性

AI との協業を通じて、テックタッチのコミュニケーションデザインがどのように進化していくのか、そしてそれがビジネスの成長にどう貢献していくのか、そのプロセスをこのブログで発信していきたいと思っています。同様の課題を抱える方々にとって、私たちの取り組みが少しでも参考になれば幸いです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!